MyFairOlympics

フィギュア・スケート 男子シングル

2026.02.21

今大会でもっとも衝撃を受けたのは、個人戦男子シングル、イリア・マリニン選手のフリースケーティング(FS)でした。

調子が良さそうには見えなかったものの、ショートプログラム(SP)は1位。本調子でなくてもトップに立てるあたり、さすが2年以上負けなしの絶対王者です。

「オリンピックには魔物がいる」とよく言われます。
記憶に新しいところでは、平昌五輪のネイサン・チェン選手がSPでまさかの17位、ソチ五輪の浅田真央選手がSPでまさかの16位などが思い出されますが、どちらもSPでした。
FSは演技時間が長い分、多少のミスならリカバリーできることもありますが、短いSPでは挽回の余地がほとんどありません。番狂わせが起こりやすいように思います。SPで下位に沈んでもFSで本来の力を発揮し、大幅な順位アップを果たす選手は少なくありません。が、金メダル候補の実力者が、SPを無難に終えたにもかかわらず、FSであれほど乱れてしまう光景は初めて見ました。

あんなこと、あるんですね。
最初の転倒では驚きのあまり声が出ましたが、その後はミスのたびに、観ているだけの自分までダメージを受けてしまい、ただただ苦しかった。数日経った今となっては正確な言葉にできないのですが、胸が締めつけられるだけでなく、みぞおちの奥まで痛んだような感覚でした。マリニン選手の特別なファンというわけではないのに、本当に辛くて、そんな自分自身にも驚きました。

FSのマリニン選手、蒼然の15位でした💦(トータルでは8位)

オリンピックで雪辱するには、4年待たなければなりません。

どうしてあんな事になってしまったのか。
理由はいろいろ言われていますが、一番納得出来るのは団体戦の影響です。1週間でSP2回+FS2回と、4演技。当初団体戦はSPのみの予定だったのが、日本に追い上げられ、「マリニンが出なければ団体金は難しい」とFS出場を依頼されてしまったそうです。疲労もあったでしょうし、調整計画が狂った可能性もあります。アメリカは、彼の個人メダルと団体金メダルを交換してしまったようにさえ感じました。

本人は「団体戦に出たせいで個人のメダルを逃した」とは決して言わないでしょうが、かわりに(?)キスクラでこんな言葉を口にしたそうです。マイクに拾われちゃったらしい。

“They should have sent me to Beijing. Then I wouldn’t have skated like this.”
北京に出してくれていたら、こんな演技にはならなかったのに。(訳:ChatGPT)

マリニン選手は4年前の全米選手権で2位だったにもかかわらず、北京五輪代表に選ばれませんでした。アメリカには3枠あったのに、彼は補欠。出場したのは全米1位のチェン選手、3位のヴィンセント・ジョウ選手、4位のジェイソン・ブラウン選手でした。

あのとき出場していたら、世間の注目はチェン選手に集中し、彼はプレッシャーを感じることなく伸び伸び滑れたかもしれません、ちょうど4年前の鍵山優真選手のように。あるいは初出場で失敗したとしても、チェン選手のように2度目の五輪で経験を生かし、最高の演技ができたかもしれない。

しかもジョウ選手は、北京で団体戦に出場後コロナ陽性が判明し、個人戦を棄権しました。もし判明がもう少し早ければ、補欠だったマリニン選手が出場していたかもしれない。ドラマチックにもほどがあります。

ただ彼自身、「もし出ていたらその後の人生がどうなっていたかは分からない」とも語ったのだとか。北京五輪に出られなかった悔しさが糧となり、今の強さにつながった可能性もなきにしもあらずで、何が禍で何が福かは、簡単にはわからないと思ったりしてます。
次の五輪では金メダル、取らせてあげたいなぁ。

衝撃のあまり随分マリニン選手の事を書いてしまいましたが、そろそろ他の選手の感想も。最終順位の低い方から順に書いてみます。


22位 ドノバン・カリージョ(SP23位・FS19位)
前回五輪にメキシコ勢として30年ぶりに出場したカリージョ選手、再び五輪のリンクに帰ってきました。無茶苦茶会場を沸かせていました。確かに応援したくなっちゃうこの笑顔。フリーのプレスリー・メドレー良かった。

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20位 マキシム・ナウモフ(SP14位・FS22位)
かつてロシア代表だったペアのエフゲーニヤ・シシコワ&ヴァディム・ナウモフ組は結婚しましたが、そのご子息がマキシム・ナウモフ選手。アメリカ代表として出場です。
実は私、シシコワ&ナウモフ組をすごく近くで見た事があります。幕張で世界選手権が行われた際、ロシア選手団がダイエー新松戸店のスケートリンクで公開練習をしていて、それを見に行ったんです。リンクサイドぎりぎりの所で見ました。オリンピックのメダルは持ってないペアですが、この時の世界選手権では優勝したので日本にはいい印象を持っていたかもしれません。ちなみに、全く覚えてはいないのですが、選手達が滑る前のリンクを一般公開していて、同じリンクで私も滑ったらしいです。当時のメモに「(誰かに)スケート靴で蹴られてすごく痛い思いをした」と書いてありました(苦笑)。まだマキシム選手が生まれる前の話です💦
この夫妻、昨年の飛行機事故で無くなってしまいました。マキシム選手、ご両親と一緒に映っている写真を持っていました。

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16位 アレクサンドル・セレフコ(SP18位・FS16位)
兄弟で国(エストニア)の代表を争っているそうです。前回五輪に続き今回もお兄さんが出場です。前回は28位でFSに進めませんでしたが、今回は見事進出。
SPではキラッキラのアイドルスマイルを見せていましたが、FSでは思うような演技が出来ず肩を落としてました。でも、順位だけで比較するとFSの方が良かったんですね。

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3位 佐藤駿(SP9位・FS3位)
団体戦のFSが最高の出来で大感動したのに1位には届かなくて、「嬉しいけど切ない」という複雑な気持にさせられました。本人はひたすら泣いていて気の毒だったのですが、まるで神様が「あれは、ちょっと可哀想だったから、個人のメダルもあげとくか」と差配してくれたみたい(笑)。関係はないんだけど、団体戦のショートの頑張りが報われた気がしました。
私、ソチ五輪の時に自分のブログにこんな事を書いていました。

「『火の鳥』といえばライサチェク」という印象が強すぎて、「町田選手に『火の鳥』やられても迫力ないよ……」なんて思ってました。
ライサチェク選手の火の鳥が大鷲のようなイメージなら、町田選手の火の鳥は雀のように見えてしまってました(ごめんなさいっ!!)。
が、昨夜の火の鳥は燕のような鋭さがありました。イーグルスも良いけれどスワローズもいいよ!!
なんか、ホントに火の鳥を連想出来ました

佐藤選手の火の鳥も、以前は弱々しさを感じていたんですが、すっかり逞しくなりました。鶺鴒にでもたとえましょうか。
そして、その町田樹さんが『火の鳥』の演技の解説をするというのも感慨深い……。

2位 鍵山優真(SP2位・FS6位)
FSが終わった瞬間、呆然自失……のように見えましたが、結果的には銀メダル。今回はFSでミスする人が多かったように思います。佐藤選手のメダルが決まって、自分の事以上に喜んでいたように見えたのがステキでした。

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1位 ミハイル・シャイドロフ(SP5位・FS1位)
いやー、びっくりした。いや、去年の世界選手権2位だし、GPファイナルにも2年連続出場している実力者だから金メダリストになっても不思議ではないのですが、勝手に「マリニン選手と鍵山選手の一騎打ち」と思ってしまってました。そういえば、私が初めて現地で生観戦した五輪がリレハンメル大会なのですが、あの時は「ブラウニング選手vsペトレンコ選手の一騎打ち」と予想していたらアレクセイ・ウルマノフ選手が勝ってびっくりしたっけ。「良い演技をした選手に花を投げよう。ブラウニング選手に投げたいな」と思っていた私は結局ウルマノフ選手に投げたのですが……え、シャイドロフ選手のコーチがウルマノフさんですって?……って事は、キスクラにいた人、ウルマノフさん!? 別人のようだ……。
コーチとしても五輪で勝利したのですね。おめでとう✨

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解説の町田さんもビックリの予期せぬプログラム構成にしてきたんだそうです。金メダリストに相応しい素晴らしい演技でした。
カザフスタン出身選手のフィギュアでのメダルは2014年ソチ大会の故デニス・テンさん以来😢 金メダルは初めてです。

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男子シングルでは3大会連続で日本人選手2人が表彰台に立ちました。凄い!!